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2020年7月04日

【書評】投資賢者の心理学

investment

こんにちは、筋肉めがねです。

この世に生を受けて30余年、最近は投資に関する知識も増えてきております。

さて、社会人になり数年経つと、そろそろ投資をはじめてみようか、という時期がくると思います。

ただ、投資を始めてみたは良いものの、最初から運用成績が良い、という事は稀ですよね。

例えば株の場合、

景気が好調で周りが株を買ってるらしいから自分も買ったら、すぐに暴落した。
株を買ったらすぐに株価が下がった。安値で買えると思い買い増したら(ナンピン買い)、更に暴落した。
持っている株価がどんどん上がっていく。ここがピークと思い早々に売ったら(利食い千人力) 、さらに株価が上昇した。

株取引を始めた頃はこういう状況が多々あると思います。どうしてそういう事が起こるのか。 株で大きな損失をださないためには何をすれば良いのか。

そういうポイントを行動経済学という学問を通して解説してくれるのが本書です。

いかに大きく勝つか、ではなく、資産運用をしながら、いかに資産を守るか、という方法を探している方に最適な良書です。

初心者が株で大きな損失を出さないための最適な方法とは

初心者に最適な方法は、結論、給与天引きでの「ドル・コスト平均法」です。

給与天引きで一定の資金を別の口座へ移すと、心理的には、この資金があたかも最初から無かったような感覚に陥ります。メンタルアカウンティングの1つです。

これで資金を確保します。

「ドル・コスト平均法」は、毎月一定額を同じ投資対象に投資し続ける方法です。

ただ、「ドル・コスト平均法」の最大の効用は、長期的に複利の効果を利用してリターンが大きくなる、という事ではありません。下がるリスクも勿論あれば、タイミングによっては一括投資よりもリターンが小さくなる事があるんですよね。

本当の最大の効用は、購入をルール化する事で、上がり下がりに対して気を揉んだりする必要がない、という事です。

非合理的な行動をしないための仕組みづくりが大事

この本の核となる部分ですね。

先にも書きましたが、投資をしていると、どうしても損をしてしまったり、あるいは手に入ったであろう利益を見逃す事があります。それは投資商品の価格の上げ下げに一喜一憂してしまい、非合理的な判断をしてしまうからです。

つまり、それを防ぐためには、非合理的な判断をしないための仕組みを作ってあげれば良いのです。

給与天引きもしかり、「ドル・コスト平均法」もその一部です。

「時間」の過ごし方についても同じ事が言えそうですね。

時は金なり、とは良く言ったもので、時間はお金よりも大事だと実感する時がありますよね。

どういう風に時間を過ごすのか、機械的にスケジューリングをした方が、気持ちが上下せずに、安定したパフォーマンスを発揮できますよね。

ただ、「時間」については、一緒に過ごす相手がいる場合があるので、そういう時は、少し違う観点で考えてみる事も必要です。

本書では、他にも非合理的な判断をしないためのルールとして、具体的な株の投資方法なども紹介しています。

  • 一年に一回、その年のパフォーマンスによって、次の年に投資する銘柄を決める
  • 投下資本利益率と加重平均資本コストの関係から売買の判断をする

著者はどんな方

大きく損をしないために、初心者が長く投資を続けていくためのtipsが散りばめられた本書ですが、著者はどんな方なのか。

著者は「大江 英樹」さん。大手証券会社で25年にわたって個人の資産運用業務に関わってきた有識者。

ツイッターでも盛んに発信されてます。
大江英樹さんのツイッター

一般的な勘違い

長らく個人の資産運用業務に携わってきた著者が、投資に関する一般的な勘違いについても指摘してくれています。

  • ハイリスク・ハイリターンの本当のところは、実際には「ハイリスク・ハイリターンもあり得るが、ハイリスク・ハイロスもあり得る。」
  • 投資は「不労所得」では無い。頭を使う立派な労働である。
  • プロは絶対ではない。プロのすごいところは、相場が悪い時の対処の仕方にある。

なるほど、学びが深いですね。

投資家が陥りやすい心理的な罠

著者の大江さんが得意とする行動経済学に基づき、幾つか投資家が陥りやすい心理的な罠が紹介されています。

投資をする時に、どういう心理状態になるのか。それは何故なのか。そこを理解しておくと、非合理的な判断をする回数を減らす事ができます。

金融機関の担当者の意見は正しいと思い込む

金融機関に行って担当者に勧められた商品を買った。これは、プロが薦めた商品だから間違いないはずだ。

こう思い込む事はありますよね。でも、本当に担当者が薦めた商品を買ったのでしょうか。

実際にはこういうやり取りではなかったですか。

「何か良い商品ないかなー?」
「なるほど、どういう商品をお考えですか?」
「xxxxはどう思う?」
「それは、先行きが明るくて良い銘柄ですよ!」

そう、実は金融機関に行く前に、すでに買いたい商品を内心決めていたとしたら。金融機関に行った事も、実は担当者に背中を押して欲しかったからなのでは。

この心理を行動経済学で確証バイアスというそうです。

これは、投資だけでなくて普通に生活をしていると、良くこういう場面に遭遇しますよね。

例えば、知人に大事な事を相談する場合、往々にして自分の中ではすでに方向性が決まっていて、その決断を後押しして欲しいとか。

そもそもですが、資産運用は金融機関に相談せずに自分で勉強しましょう。

もしも金融機関に相談する時は、フラットな考えで相談してみると自分の知らない事を学べるかもしれません。

みんなが買ったから買う。みんなが売ったから売る。

行動経済学でハーディング現象と呼ぶそうです。

まわりの意見に流される、という事良くありますよね。別に投資だけではなく、社会で生活をしていればそういう場面は頻繁に出てきます。

自分の意見を持って行動しましょう。そのためには勉強、そして経験を積みましょう。投資も一緒です。

絶対上がり続けるって

株価を見ていると、どうやら上昇傾向が続いている。このまま上がれば、前代未聞の株価を記録するぞ。間違いない。絶対にこのまま上がり続けるから今買い増しだ!

現在続いている状況が、自分にとって都合よく解釈できる時、その状況が更に続くだろう、という心理に陥るようです。

行動経済学で現状維持バイアスと呼びます。

よし、株価が上がり続けている。更に買いますぞ!

気をつけましょう。「現状維持バイアス」、気に留めておきましょう。

それでも投資で勝ちにいきたい

心理的な罠があることは分かった。それでも投資で勝ちにいきたい。

これは個人的な意見ですが、景気が好調な時は、慌てず先ずは様子をみてください。はじめるのであれば、少額から。

そして、投資した少額の資産がどういう動きをするのか、そして動いた時に自分の心理がどういう風に変化するのか、そこを経験しましょう。

市場を観察している間は、勉強しましょう。せっかくなので本書のように投資に直接関わる本だけでなく、多角的に本を読む事をオススメします。

僕がお金の勉強する上で役に立った本を3つ紹介します。

先ずは、「金持ち父さん貧乏父さん」。
言わずとしれた名著で、貸借対照表の概念を個人の生活に落とし込んで理解できます。

続いて「お金2.0」。
現代において「価値」とは何か。どういう資産を増やしていくべきか学ぶ事ができます。

最後に「世紀の空売り、マネーショート」。
ハーディング現象「みんなが買ったから買う。みんなが売ったから売る。」に打ち勝つ心理を、リーマンショックを通して学べます。

書籍で勉強しながらも次のチャンスを虎視眈々と待ちます。

11月には米国での大統領選挙があります。大統領選がある時期に、株価は大きく動く事が予想されます。今のうちから、過去の大統領選において株価がどう動いたのか調べておき、次に備えましょう。

また、Covid-19の第二波が本格的に到来したら、再び株価が暴落する事も考えられます。その時を狙うのも1つの手です。

最後に

今年3月中旬ごろに、Covid-19の影響で一時急落した米国株(特にTech株)ですが、ここ数ヶ月少しずつ株価は上昇しています。

7月2日にアメリカ労働省が発表した6月の雇用統計によると、失業率が11.1%と前月(13.3%)から改善した、とのことです。

その発表を追い風に、米国株は更に上昇しました。

在宅勤務や時短で時間のできた個人が、これを機に投資用口座を作るという動きがあります。

そこの資金が市場に流入しているので株価が上がっているという見方もありますので、実体経済からは離れた株価となっている、という事も考えられます。

果たして売るべきか、買い増すべきか、どういう判断をすべきか。

そのために一筋の光を示してくれる良書でした。

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