こんにちは、めがねです。
昨年の11月から、CFAレベル2の勉強を進めております。
CFAレベル2の学習に取り組むにあたり、僕なりに、ざっくりと学習プランを立てました。ただ、やみくもに学習プランを立てたわけではなく、あらゆる先人たちの知恵を借りました。
中でも、CFA charterholderであるRachel Bryantさんが、「Direct path to the CFA Charter」という本を書いており、その内容がとても役に立ちました。
それで、書評を書いてみようと思います。
「CFAを受験する」と決断してから、決めるべき事は沢山あります。
そして、CFAは、高校受験や大学受験の要領とは異なるので、これまで培ってきた「受験に対する臨み方」を使える訳ではなく、自分で新たに受験のマイルストーンを作っていく必要があります。
これが中々難しいんですよね。頭を悩ませるところです。
本書の良いところは、CFAに合格するために、何をどのタイミングで実施すべきか、1から10まで提示してくれるところです。
僕自身、Level Ⅱの学習プランを立てる際に、迷う部分が幾つかありましたが、この本のお陰で大方の方向性は決まりました。
他にも、僕が知らないだけで、参考になるCFA本は多々あるとは思いますが、僕の知っている限りでは、CFA合格のベストプラクティスが学べる本です。
人によって本から受ける影響は異なると思いますが、個人的に、以下の3点は特に役立つ内容でしたので、要点をシェアします。
CFAの勉強時間について、「約300時間の勉強時間で合格できる」という文句をところどころで目にします。
僕がCFA Level Ⅰに合格するにあたり、費やした勉強時間も約300時間でした。
CFAレベル1 合格までに必要な準備(2016年版)
ただ、どうやら300時間では少ないようです。
例えば以下は、2019年6月に、CFAを受験した方へ実施されたアンケート結果の一部抜粋です。
こちらを見ると、全受験生の勉強時間の平均が323時間であって、合格者の勉強時間の平均ではないことがわかります。
(出所:JUNE 2019 CFA PROGRAM CANDIDATE SURVEY)
本書では、「300時間」というのは、これだけ勉強すれば合格する指標ではなく、これだけの勉強時間では合格するには不十分、という指標だと書かれています。
ただ、勉強時間の目安は「300時間」では安心してはいけない、という事ですが、そもそもの話として、「xxx時間勉強する」という事を目標にすべきではないでしょうね。
後にも書きますが、必要な準備を全て実施した上で、結果的に「xxx時間勉強した」ということになるのだと思います。
mockup試験というのは、模擬試験の事ですね。高校受験、大学受験で経験された方も多々いらっしゃると思います。
僕は、Level Ⅰの試験勉強の時には、合計2回のmockup試験を受けました。どうやら、これでは少ないようです。
本書では、mockup試験は最低4回、もしNative Speakerでなければ、7回はmockup試験を受ける事をすすめております。
そして、mockup試験で目標とするスコアは70%ではない、という事です。レベルによっては、80%を目指しなさい、という事です。
もちろん、1回目のmockup試験で、この点数を取ることは難しいので、mockup試験を繰り返し受ける中で、目標点数に近づけていきましょう。
CFA協会は、試験毎にpassing scoreを算出し、それをベースに合格者を選んでいるわけですが、大方、各単元において70%以上のスコアを取れば、合格するだろう、と言われています。
例えば、2018年にCFA協会が発行した以下の資料では、「passing scoreは70%ですよ」と明確に定義しているわけではありませんが、70%を一つの指標として使っております。
(出所:Understanding Your Exam Result)
本書では、70%という閾値は、他の大多数が目標とする数字であって、CFAに受かる予定のあなたが目標とすべき数値ではない、と書かれています。
フラッシュカードについては、作る事が目的になってしまわないように、注意が必要です。
テキストの内容を理解すべきタイミングでは、それに集中し、例えば2周目のテキストレビュー時、演習問題を解く際に、フラッシュカードを作る、というぐらいで良いのではと思います。
ただ、受験までの時間に余裕が無ければ、フラッシュカードを作っている暇はないと思うので、そういう場合は演習問題に注力すると良いでしょうね。
僕自身、これまでの受験、試験勉強時にフラッシュカードを使ったことがありませんでしたが、本書を読んでみて、今回はじめてフラッシュカードを試験勉強に導入してみようと思いました。
*Amazonリンクになっております。
色付きのフラッシュカードもありますね。
著者は「Rachel Bryant」さん、現在はBank of Americaで仕事をされているようで、2019年には、「Most Powerful Women in Banking NEXT」に選ばれています。CFAの全てのレベルに1回の受験で合格された、とのことです。
小さい頃は、Gymnasticsの跳馬に力を入れていたようです。本書では、跳馬競技にて、練習を重ねる毎に段々と上手くなっていった経験を通して、CFA受験においては演習問題がとても重要だよね、というエピソードも登場します。
どんな事でも、はじめは失敗する事が多いですが、練習を重ねると、段々と上手くなっていくものですよね。
著者が跳馬に熱中していた、という事で、僕自身も空手に熱中していた時期を思い出しました。空手についても、「型」の練習を積み重ねれば、綺麗で洗練された動作ができるようになり、「組手」の練習を積み重ねれば、間合いの取り方、試合の運び方など、段々と上達していきます。
本書のメインパートは、2つに分かれています。
1章では、CFAを受験しようと志した事がある方なら一度は疑問に思ったであろう点について、著者の見解を述べています。
そして、2章では、著者の体験を交えながら、戦略的な学習プランの立て方を提示しております。
1章の「Answers to Big questions」では、受験にまつわる悩みを解決してくれます。
特に、CFAを受験しようかどうか迷っている、というタイミングの方には、参考になるポイントが書かれていると思います。CFAが魅力的な資格である事は分かる。ただ、自分の能力や職務経験で最後まで合格できるのか客観的に判断できない。そういう理由で、一歩が踏み出せない時がありますよね。
本書の著者はNative speakerで、且つBankerではありますが、できるだけ公表されているデータを基に客観的な意見を書いています。ですので、non-nativeの方が受験するか否かを決める場合にも、参考になる意見が書かれています。
「モチベーションを維持する方法」に関しても著者の意見が述べられていますが、根性論的な部分がなくはないので、僕のお勧めを紹介しておきます。
「筋トレ」です。
ドイツでは、ジムが閉まっているので「家トレ」です。
朝6時ぐらいに起きて、家トレすると、とても効果的だと思います。筋トレは、ちょっとしたカンフル剤みたいなもので、筋トレ後に勉強すると、とても捗ります。
「家トレ」にお勧めの動画はこちらです。
2章の「Study Regimen」では、戦略的な学習プランが紹介されてます。
Level Ⅰの試験からLevel Ⅲの試験まで、著者が受験した時の体験を基に種々アドバイスが書かれており、どのレベルの受験生に対しても学びのある内容が書かれています。
また、各レベル毎に特有のアドバイスもあれば、レベルを跨いで参考になる考え方も書かれているので、長い長いCFA受験のお供に良いかもしれません。
学習プランは、ざっくりとした方向性を決める事はとても大事ですが、ガチガチに決める事はやめた方が良いと思います。特に、同じレベルの2回目の受験、3回目の受験、という事で無ければ、テキストで見る内容は、ほとんどはじめての内容だと思いますので、プラン通りに進むかどうか分からないですよね。
そして、先にも書きましたが、今週は「何時間」勉強する、という目標を立てるよりも、今週は「この単元」を勉強する、という目標を立てた方が良いのでは、と思います。結果、「xxx時間勉強した」という事になるのだと思います。
以上で、書評は終わりです。
興味のある方は、ぜひ読んでみると良いと思います。
以下、書評ではありませんが、本書を読みながら気になったポイントを幾つか調べたので、シェアしようと思います。
以下3点を数値でみていきたいと思います。
CFA協会が公表している最新の情報(Curriculum & Exam Topics)によると、各レベルの単元毎のweightは以下の通りです。
Topics (%) | Level Ⅰ | Level Ⅱ | Level Ⅲ | |||
---|---|---|---|---|---|---|
Ethical and Professional Standards | 15-20 | 10-15 | 10-15 | |||
Quantitative Methods | 8-12 | 5-10 | 0 | |||
Economics | 8-12 | 5-10 | 5-10 | |||
Financial Reporting and Analysis | 13-17 | 10-15 | 0 | |||
Corporate Finance | 8-12 | 5-10 | 0 | |||
Equity Investments | 10-12 | 10-15 | 10-15 | |||
Fixed Income | 10-12 | 10-15 | 15-20 | |||
Derivatives | 5-8 | 5-10 | 5-10 | |||
Alternative Investments | 5-8 | 5-10 | 5-10 | |||
Portfolio Management and Wealth Planning | 5-8 | 10-15 | 35-40 |
Level Ⅰのポイントは、Ethicsの配点の高さ、そして、CFAのベースとなる単元(Quanta, Economics, FRA, Corporate Finance)について、Level Ⅱよりも配点が高い、という点です。
Ethicsについては、以前の記事でも書きましたが、最重要な単元です。
CFAレベル1 合格までに必要な準備(2016年版)- Ethicsが合否を分ける
CFAのベースとなる単元については、Level Ⅰでベースの知識を身に付ける必要があります。
これは、そのままLevel Ⅱのポイントにも繋がりますが、Economicsを除いては、これらの単元はLevel Ⅲでは出題されません。つまり、CFA協会は、CFAのベースとなる単元については、Level Ⅱまでに身に付けてください、という事を受験生に対して要求しています。
一方、Level Ⅱでは、Asset Classと呼ばれる単元(Equity, Fixed Income, Derivatives, Alternative Investment)のweightの振れ幅が、Level Ⅰより大きい事が分かります。例えば、Equityについて、Level Ⅰでは、2%(10%-12%)の振れ幅であるのに対し、Level Ⅱでは、5%(10%-15%)の振れ幅があります。
つまり、Level Ⅱについては、どの単元で多くの問題が出題されるのかは当日まで分からない、という事です。「この単元はそんなに出題されないだろう」、と高をくくると、テスト当日に大きな間違いをおかす危険があるので、注意しなければなりませんね。
CFA協会がオフィシャルサイトで公表しているデータによると、各レベルの、過去10年間(2010-2019 6月)の平均合格率は以下の通りです。
Level Ⅰ | Level Ⅱ | Level Ⅲ | ||
---|---|---|---|---|
41% | 44% | 53% |
出所:1963 - 2019 June CANDIDATE EXAMINATION RESULTS
レベルがあがるにつれて、合格率も上がっています。
それぞれの合格率を掛け合わせると、9.56%、つまり、約10%の受験生が、Level ⅠからLevel Ⅲまで、ストレートに合格する、という事です。
そして、残りの約90%の受験生は、どこかで最低一度は不合格となる、という事ですね。
ちなみに、CFAは「世界は最もパスする事が難しい試験top10」に入るようで、1番難しい試験は、ソムリエの試験だそうです。
2016年6月にCFA Level Iに合格して早4年、来年8月CFA Level IIへの申し込み完了です。世界で最もパスする事が難しい試験top10に入るCFAですが、ちなみに一番難しいとされる試験はワインソムリエの試験でMaster Sommelier Diploma Exam、80年の歴史の中で合格者は200人程度らしい。#CFA #CFALevel2
— めがね (@KinnikuMeganeDe) August 28, 2020
2018年12月、2019年12月のLevel Ⅰの試験について、CFA協会が発表している統計を基に、どの国で受験者が多いのか、動向をまとめてみました。
(出所1: More than 29,000 Investment Professionals Worldwide Pass Level I CFA Exam)
(出所2: 34,651 Investment Professionals Worldwide Pass Level I CFA Program Exam)
*各国の人口は、国連から発表された、各年7月1日時点の数値を使っています。
2019年12月について、対前年比の受験者数を見ると、オーストラリアは143%、中国は121%と、CFAの人気が高まっている事が分かります。
そして、対人口比の受験者数を見ると、香港、シンガポールが他よりも圧倒的に多いですね。香港に至っては、1万人あたり3人はCFAを受験しているようです。
少し脱線しますが、中国の方にとって、CFAは大学入試よりも簡単なものだ、という記事があります。過酷な大学入試を経験しているからCFA受験に有利、という事は、個人的には無いと思いますが、中国におけるCFAの人気が高まっているのは間違いなさそうですね。
CFAにLevel Ⅳはありません。無いんですが、一部のChaterholderにとって、「Level Ⅳ」と呼ばれるほど光栄な事があるそうです。
それが、「Level Ⅲ試験のEssay採点のために、VirginiaのCharlottesvilleに招待される事」だそうです。
Level ⅢのEssay試験については、CFA協会から選ばれた500人程度のCFA Charterholderが、2週間程度時間をかけてじっくりと採点します。
採点すべき時間は採点するんですが、オフタイムにはゴルフを楽しんだり、ツアーに参加したりと、有意義な時間を過ごすようです。
採点員として、Charlottesvilleに招待される事(Camp CFAと呼ばれていますね。)は、とても名誉な事だと思われているので、少しユーモアを交えて「Level Ⅳ」と表現されたりするんですね。
You’re Not A True CFA Until You’ve Made It To Little-Known Level IV
最後に、2021年から導入されるコンピューターベース試験について、書いておきます。
以前は、Level Ⅱ、およびLevel Ⅲの試験については、毎年6月に受験する、という選択肢しかありませんでしたが、2021年以降は、コンピューターベース試験がはじまり、年に複数回あるTime windowから、自分のスケジュールに合った受験時期を選ぶ事ができるようになります。
ちなみに、2021年の各レベルの試験時期は以下の通りです。
Computer-Based Exam Information
注:2021年3月の試験は、2020年12月、および2021年2月の試験を何らかの理由で受験する事ができなかった受験生のための枠です。
また、2022年の試験時期は以下の通りです。
ペーパーベース試験と大きく変わるところは以下の2点です。
CFA Exam Eligibility Policy (Computer-Based Exam)
また、ペーパーベース試験のPolicyとの違いを、更に細かくご覧になりたい方は、こちらに分かりやすくまとまっております。
そして、「Candidate Agreement」については、試験直前ではなく、時間に余裕を持って必ず目を通しておきましょう。
2021年2月受験者用 Candidate Agreement
2021年3月-11月受験者用 Candidate Agreement
当日は、以下のような感じで行動する事になると思います。朝9時スタートの場合を例としています。
7:30: 試験会場へ到着
7:30-8:50: review
8:50-9:00: 移動
9:00-9:20: Instruction
9:20-11:35: Morning session
11:35-12:05: Lunch
12:05-14:20: Afternoon session
14:20-14:30: Survey
朝9時スタートの場合、拘束時間は、5時間半(9:00-14:30)です。
先ず、朝ごはんは必ず食べましょう。そして、家を出る前に持ち物をチェックですね。ちなみに、コンピューターベース試験では、腕時計は持ち込み禁止です。これは、従来のペーパーベース試験とは違うので注意する必要があります。
コンピューターベース試験では、Prometricのテストセンターを使う事になりますが、Prometricのテストセンターでは、「test timer」がありますので、時計の心配はいりません。
CFA PROGRAM CANDIDATE CHECKLIST COMPUTER-BASED EXAMS
Testing Accommodations Pre Approved Personal Items
コンピューターベース試験で、当日、必ず持っていくべきものは以下ですね。
試験会場に持ち込めるもの
必要であれば
心配であれば
試験会場には持ち込めないが、持っていくべきもの
必要であれば
Personal Belongings Policyはこちら(「CFA Program Candidate Agreement February 2021」)でも言及されております。
アドミッションチケットは必要なさそうですが、テストセンターへ持ち込めるものについては、必ず自分で確認をしましょう。
コンピューターベース試験では、鉛筆、消しゴムは持ち込めません。では、試験中にどうやって、各自workするのか、というと、先ほどの「CFA PROGRAM CANDIDATE CHECKLIST COMPUTER-BASED EXAMS」に明確に記載がありますね。
You will be provided with a whiteboard or erasable writing tablet for use during the exam.
どんなホワイトボードとタブレットが支給されるのか、事前に知りたいところですが、情報が無ければ、身近にあるホワイトボードやタブレットで練習しておくと良いと思います。
ランチと勉強道具は、試験会場には持ち込めませんが、必ず持参しましょう。
試験会場に持ち込めないものについては、車の中や、近くのロッカーなど、会場から近いところに保管しておきましょう。
朝9時スタートであれば、できれば7時半には、試験会場へ到着する事をお勧めします。
テストセンターへ到着したら、中に入らずに静かでレビューできる場所を探しましょう。ドイツでは、フランクフルトとミュンヘンのテストセンターが試験会場となります。僕は、2016年6月にフランクフルトのメッセでLevel Ⅰを受験しましたが、試験会場となる入り口のまわりに、受験生がそれぞれの場所を陣取り、レビューをしていました。朝のレビューのタイミングでは、例えば友達を探してみたり、新たな友達を作ろう、という事は考えなくて良いでしょう。
ペーパーベース試験の場合は、Morning session開始20分前に、試験会場の扉が開いておりましたが、コンピューターベース試験では、開始30分前には必ず会場に到着してください。
開始30分前、です。
こちらにも書いてありますね。
2021年2月受験者用 Candidate Agreement
午前の部が終われば、休憩があります。
ランチは必ず持参し、車の中、駅のロッカーなどに置いておきましょう。そして、ランチは必ず一人で食べましょう。さくっと食べて、レビューするのみです。
そして、会場に戻って午後の部ですね。
ペーパーベース試験では、17時終了の午後の部で、早めに終わったと自己判断し、16時半までに試験官に報告した受験者については、会場を出る事が許されておりました。
コンピューターベース試験では、今のところ、午前の部、午後の部ともに2時間15分と、とても短い時間なので、「早く終わったら部屋を出れるのかな。」という心配はしなくて良さそうです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
今回は、「Direct path to the CFA Charter」という本を紹介しました。
来週(2月16日)からコンピューターベースでのCFA Level Ⅰの試験がはじまりますね。
ペーパーベース試験とは要領が異なる箇所が多々ありますので、注意していただければと思います。
この記事が、すでにCFAに取り組まれている方、これからCFAに取り組もうとされている方の一助になれれば幸いです。
CFAレベル1 合格までに必要な準備を以下の記事で書いています。Level Ⅰ合格を目指している方には、こちらも参考になると思います。
2021年10月追記
レベル2を受験してきました。
CFAレベル2受験後の振り返り